Letter

進化学:動物の多細胞性の起源と、多能性

Nature 570, 7762 doi: 10.1038/s41586-019-1290-4

動物の起源に関して広く支持されている(ただし、ほとんど検証されていない)仮説では、動物は、現在の海綿動物が持つ襟細胞や襟鞭毛虫類に構造的に類似した、微繊毛の襟に囲まれた1本の繊毛を頂端部に持つ単細胞の祖先から進化したとされる。今回我々は、動物の起源に関するこの見方を検証するために、海綿動物の3タイプの細胞(襟細胞、多能性の間葉系原始細胞、上皮扁平細胞)のトランスクリプトーム、運命、挙動について、襟鞭毛虫類や他の単細胞ホロゾアとの比較を行った。その結果、海綿動物の襟細胞のトランスクリプトームは意外にも、襟鞭毛虫類のものと最も類似性が低く、動物か海綿動物のどちらかのみに固有の遺伝子が著しく多いことが分かった。これに対して多能性原始細胞では、他の後生動物の幹細胞や、増殖段階にある2種類の単細胞ホロゾア(群体性襟鞭毛虫を含む)と同様に、細胞増殖や遺伝子発現を制御する遺伝子の発現が上昇していた。海綿動物の一種であるAmphimedon queenslandicaの襟細胞は一時的な準安定状態で存在し、容易に原始細胞へと分化転換する。この原始細胞は、他のさまざまな細胞タイプへと分化できる。このような海綿動物の細胞タイプの転換は、単細胞ホロゾアで起こる一時的な細胞状態の変化に類似している。総合するとこれらの解析は、海綿動物の襟細胞と襟鞭毛虫類の相同性や、最初の多細胞動物が分化能の限定された細胞からなる単純な球体だという見方を否定している。今回の結果は、最初の動物細胞は、現在の分化転換する細胞や幹細胞に類似した様式で、複数の状態間を移行できたとする見方と符合する。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度