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気候科学:二酸化炭素の半球間の勾配から明らかになった50年間の北半球陸域の炭素取り込み

Nature 568, 7751 doi: 10.1038/s41586-019-1078-6

全球の陸域と海洋の炭素シンクは、過去数十年間にわたり、二酸化炭素の排出量の増加に比例して増大してきた。全球の陸域炭素シンクに対する寄与は、北半球の陸域が支配的であると考えられているが、北半球の陸域シンクの長期的な変化傾向はまだよく分かっていない。本論文では、1958〜2016年の大気中二酸化炭素の半球間の勾配の測定結果を用いて、北半球の陸域シンクは、1960年代から1980年代後半の間は安定していたが、その後、1990年代には0.5 ± 0.4 Pg C yr−1増大し、2000年代には0.6 ± 0.5 Pg C yr−1増大したことを示す。1990年代の北半球の陸域シンクの増大は、その期間の全球の陸域炭素フラックスの増大の65%に相当する。その後の2000年代における増大は、全球の陸域炭素フラックスの増大よりも大きく、南半球における炭素の取り込みが同時に減少したことを示唆している。今回の知見と、陸域炭素モデルのアンサンブルによる同じ期間のシミュレーションを比較したところ、1960年代から1990年代の北半球の陸域シンクの十年変化は、大気中の二酸化炭素濃度の増大、気候変動、土地被覆の変化の組み合わせで説明できることが示唆された。しかし、2000年代の増大は全てのモデルで過小評価されており、窒素沈着、散光、土地利用の変化などの駆動要因の変化の考慮を改善する必要があることを示唆している。全般的に今回の知見は、北半球の陸域が炭素シンクとして重要であることを浮き彫りにしている。

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