物理化学:オングストロームスケールのチャネルにおける分子流動とその電圧制御
Nature 567, 7746 doi: 10.1038/s41586-019-0961-5
この10年で、流体デバイスの寸法を(例えばナノチューブやナノ細孔を用いて)ナノメートルスケールまで縮小できるようになったことにより、意外な水輸送現象やイオン輸送現象が発見された。最近では、二次元材料のファンデルワールス積層によって、オングストロームスケールの精度で人工チャネルを形成できるようになった。そうしたチャネルでは、流体閉じ込めが分子スケールになり、連続体の輸送方程式の限界が試されるようになる。このスケールの水膜は、再配列して誘電率が強く抑制された単層膜や2層膜になったり、室温で氷相を形成したりする。そうした閉じ込めチャネルにおけるイオンの動きは、チャネル壁面とイオンの水和殻の間の直接相互作用の影響を受け、水の輸送はチャネルの壁面材料に強く依存するようになる。今回我々は、そうした閉じ込めの中で、水とイオンがどのように共役輸送するかを調べ、分子サイズのスリット状チャネルを通したイオン流体輸送を測定した結果を報告する。圧力と印加電場で駆動される輸送からは、トランジスターのような電気流体力学的効果が明らかになった。1 V未満のバイアスを印加することによって、圧力駆動イオン輸送の測定値(流動移動度によって特徴付けられる)が最大で20倍増大した。このゲート効果は、グラファイトチャネルと六方晶窒化ホウ素チャネルの両方で観察されたが、チャネル材料に依存する顕著な違いが見られた。我々は、水分子、イオン、閉じ込め面の材料依存的な摩擦相互作用を考慮した改良型の連続体の枠組みを用いて、グラフェンでできたチャネルと六方晶窒化ホウ素でできたチャネルでの観察結果の違いを説明する。今回の分子スケールの閉じ込めの下での流体輸送の高非線形ゲーティングは、分子輸送やイオン輸送を制御したり、最近発見された機械受容イオンチャネルにおいて役割を担っている可能性のある電気機械的共役を研究したりする上で新しい手段をもたらす可能性がある。

