ウイルス学:MHCクラスIIタンパク質がコウモリインフルエンザウイルスの異種間での侵入を仲介する
Nature 567, 7746 doi: 10.1038/s41586-019-0955-3
鳥類起源の人獣共通感染性A型インフルエンザウイルスは、ヒトでの重篤な感染症、あるいはパンデミック(世界的大流行)さえも引き起こす可能性があり、ヒト集団に対する脅威である。水鳥や沿岸に生息する鳥が、全てのA型インフルエンザウイルスの保有宿主であると考えられてきたが、最近になって、コウモリにおいて新規のA型インフルエンザウイルスが特定されたことで、この考え方は疑問視されるようになった。コウモリA型インフルエンザウイルスの主要なエンベロープ糖タンパク質は赤血球凝集素(ヘマグルチニン)であり、従来型のヘマグルチニンと塩基配列や構造に高い相同性を示すにもかかわらず、A型インフルエンザウイルスの標準的な受容体であるシアル酸やその他のグリカンには結合しない。コウモリA型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンに、このような機能的特性の不明な可塑性があることは、これらのウイルスの親和性や人獣共通感染能が、まだ完全には解明されていないことを意味している。今回我々は、感受性細胞と非感受性細胞のトランスクリプトームプロファイリングとゲノム規模のCRISPR–Cas9スクリーニングとを組み合わせて、主要組織適合遺伝子複合体クラスII(MHC-II)であるヒト白血球抗原のDRアイソタイプ(HLA-DR)がコウモリA型インフルエンザウイルスに不可欠な侵入決定因子であることを示す。HLA-DRのα鎖を遺伝的に除去すると、細胞はコウモリA型インフルエンザウイルス感染に抵抗性になるが、非感受性細胞にHLA-DR複合体の異所性発現を行うと細胞は感受性になった。異なるコウモリ種、ブタ、マウス、ニワトリのMHC-IIを発現させた場合も感染に対する感受性が生じた。さらに、マウスにコウモリA型インフルエンザウイルスを感染させると、上気道でロバストなウイルス複製が起こったが、MHC-IIを欠損したマウスは抵抗性を示した。まとめると、我々のデータは、MHC-IIが多数の種においてコウモリA型インフルエンザウイルスの侵入に不可欠なメディエーターであることを明らかにしている。これによって、広範な脊椎動物への親和性が可能となる。

