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医学研究:グルコース感受性インスリン分泌ヒトα細胞によるマウスでの糖尿病の軽減

Nature 567, 7746 doi: 10.1038/s41586-019-0942-8

細胞のアイデンティティーの転換、すなわち最終分化した細胞がストレスを受けて別のタイプの細胞へと変換される現象は、動物に広く見られる再生戦略の1つだが、哺乳類ではほとんど報告されていない。マウスでは、インスリンを分泌する膵β細胞を除去すると、グルカゴンを産生するα細胞とソマトスタチンを産生するδ細胞の一部がインスリンを発現する細胞に変わり、糖尿病の回復を促進する。ヒトの膵島にも、特に糖尿病条件において、こうした可塑性があるかどうかは不明である。今回我々は、非糖尿病または糖尿病のドナーから死後に提供されたヒト膵島の非β細胞、具体的にはα細胞と膵臓ポリペプチド(PPY)を産生するγ細胞で、細胞系譜を追跡したり、転写因子PDX1およびMAFAによりグルコースに応答してインスリンを産生・分泌するように再プログラム化したりできることを示す。変換したヒトα細胞を糖尿病マウスに移植すると、糖尿病が回復し、6か月経過してもインスリン産生は続いた。特に、高深度のトランスクリプトーム解析およびプロテオーム解析から、インスリンを産生するα細胞がα細胞のマーカー発現を維持していることが分かったのは興味深い。これらの観察結果は、in situでの細胞可塑性が糖尿病などの退行性疾患の治療法になることの概念的証拠と、その機序を解明するための分子的枠組みを提供するものである。

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