分子生物学:単一分子の精度で見たクロマチンの多重相互作用
Nature 566, 7745 doi: 10.1038/s41586-019-0949-1
多細胞生物のゲノムは、幾重にも折りたたまれて核内の3D染色体領域を形成している。近接ライゲーション法とハイスループット塩基配列解読法を組み合わせた3C法(chromosome conformation capture)や3Cを基盤とするHi-C法などの高度な3Dゲノムマッピング手法や、ChIA-PET法(ペアエンドタグの配列解析によるクロマチン相互作用解析法)などのクロマチン免疫沈降法によって、クロマチンの接点が高頻度に存在するトポロジカル関連ドメイン(TAD)の存在が明らかになり、特定のタンパク質因子が介在して作られる、絶縁や転写調節のためのクロマチンループが見つかっている。しかしこれらの手法はペアワイズ近接ライゲーションに依存していて、集団レベルでの状態を反映するため、クロマチンの相互作用の詳細は明らかにできない。単一細胞Hi-C法ならばこのような問題が克服できる可能性があるが、この方法では、現在使われている単一細胞アッセイ法に付き物のデータのスパース性が制約になる。マイクロ流体工学の最近の進歩により、液滴を用いるゲノム解析が可能になったが、この方法をクロマチン相互作用解析用に使えるようにする改変はまだなされていない。今回我々は、液滴を用いバーコード付けを行う塩基配列解読法によるクロマチン多重相互作用解析方法(ChIA-Dropと命名)について報告する。このChIA-Drop法は、従来の集団レベルで対になった接点を見る方法の使用では不可能だった単一分子レベルの精度で、複雑なクロマチン相互作用をロバストに捉えられることが実証された。ChIA-Drop法をショウジョウバエ(Drosophila)細胞に適用したところ、クロマチンのトポロジカル構造の大部分が、クロマチンの非常に不均一性の高い多重相互作用によって構成されていることが明らかになった。ChIA-Drop法ではプロモーターを中心とした多価相互作用も明らかになるので、転写に関するトポロジカルな知見が得られる。

