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古生物学:哺乳類の咀嚼およびトリボスフェニック型臼歯の機能には顎のローリングが必須である

Nature 566, 7745 doi: 10.1038/s41586-019-0940-x

過去2世紀にわたり、哺乳類の咀嚼およびそれに関連する解剖学的特徴は、脊椎動物の進化における全ての新機軸の中で最も議論されてきたものの1つである。そうした特徴の主要なものに、歯骨のみからなる下顎、そして突き出た三角形の咬頭と高さのないタロニッド・ベイシンを有するトリボスフェニック型臼歯という2つの形質がある。祖先的な哺乳類に見られる柔軟な下顎関節および下顎結合部の未融合は、内転筋系および口蓋の変化と相まって、左右の半下顎骨(hemimandible)それぞれのより大きな可動性を可能にしたと考えられてきた。哺乳類歯冠の起源に近い時期に精密な咬合が出現すると、獣類は次いで、餌の捕捉、咬断、粉砕に使われたと考えられている凹凸形状のトリボスフェニック型臼歯を進化させた。本論文では、ハイイロジネズミオポッサム(Monodelphis domestica)に保存されている、祖先的なトリボスフェニック型獣類の咀嚼ストロークについて報告する。この咀嚼ストロークは、顎が開くときに下の歯列が外転し、閉じるときに内転するという一連の単純な対称的動作であり、半下顎骨の長軸回りの回転(ローリング)によって行われる。また、この一連の動作は、外転と内転の繰り返しによる回転式の粉砕ストロークと連動している。祖先的獣類の咀嚼ストロークは、対称的な外転と内転(最初の哺乳型類から受け継いだ特徴)や、臼と杵型の回転式粉砕ストローク(トリボスフェニック型臼歯と共にステム群獣類から受け継いだ特徴)などの長軸回りの回転に強く依存していたと推測される。霊長類や有蹄類などの丘状歯を有する獣類で見られる、ヨーイングが支配的な咀嚼サイクルは派生的であり、この特徴は顎の結合部の二次的な融合によって必要とされ、互いに噛み合う高く突き出た咬頭の縮小によって可能となった。効率的な咀嚼システムの発達はトリボスフェニック型装置をもたらし、これによって初期の哺乳類は、爬虫類のように大きな餌の塊の嚥下に伴う時間のかかるゆっくりとした完全に化学的な分解を必要とすることなく、餌を小さな断片に咬断・粉砕して消化過程を開始することができるようになった。哺乳類に見られる非常に多様な歯は、こうした基本的なトリボスフェニック型の基礎計画から出現した。

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