Letter

神経障害:多発性硬化症で見られるヒトオリゴデンドロサイトの不均一性の変化

Nature 566, 7745 doi: 10.1038/s41586-019-0903-2

オリゴデンドロサイトは軸索のミエリン形成と代謝維持の両方を行っているため、その病理は神経変性疾患に関わると考えられるようになってきている。例えば、多発性硬化症(MS)では中枢神経系の脱髄が神経変性につながるが、疾患の重症度は患者間で大きくばらついている。能力障害は脱髄の程度と十分に相関しないため、このばらつきには他の要因が関わっていると考えられ、そのような要因の1つはオリゴデンドロサイトの不均一性である可能性がある。オリゴデンドロサイトは全てが同じではなく、マウスでは、脊髄由来のオリゴデンドロサイトは生得的に皮質由来のオリゴデンドロサイトよりも長いミエリン鞘を作り出しており、また、マウス中枢神経系の単一細胞解析によってさらなる違いも明らかになっている。しかし、ヒトのオリゴデンドロサイトの不均一性の程度やそのMS病態への関与の可能性については分かっていない。今回我々は、MS患者および非罹患対照者の死後脳白質領域の単一核RNA塩基配列解読を行った。対照者のヒト白質で、オリゴデンドログリアのサブクラスターが複数見つかった。その一部はマウスのものに類似しており、さらにこのような細胞状態の新しいマーカーが明らかになった。一部のサブクラスターはMS組織にはあまり存在しなかったが、もっと多く存在するサブクラスターもあった。成熟オリゴデンドロサイトサブクラスター間に見られるこのような差異は、MS病変部でのオリゴデンドロサイトの機能状態の違いを示しているのかもしれない。同様の変化が、正常であるように見える白質で見つかり、MSは局所的な脱髄から考えられるよりも広範囲に影響のある疾患であることが分かった。MSで見られるオリゴデンドログリアの不均一性の変化についての我々の知見は、疾患進行の理解や治療手法の開発に重要となるだろう。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度