発生生物学:円口類の内耳の発生と脊椎動物の半規管の進化
Nature 565, 7739 doi: 10.1038/s41586-018-0782-y
有顎脊椎動物は内耳に三半規管を持ち、その存在は進化的関係を理解するためのカギとして用いられてきた。顎口類のステムグループである顎を持たない甲皮類は半規管を2つしか持たず、外側半規管を欠く。現生円口類のヤツメウナギは一般に半規管を2つ持つと考えられている一方、同じく円口類に属するヌタウナギは半規管を1つしか持たず、かつてはこれがより原始的な形質だと見なされていた。しかし、近年の分子系統学解析および発生学的解析の結果は、円口類の単系統性を強く支持しており、そのため脊椎動物の内耳の進化の歴史は不明瞭なままとなっている。今回我々は、ヤツメウナギの一種であるカワヤツメ(Lethenteron camtschaticum)およびヌタウナギ(Eptatretus burgeri)の耳胞(内耳原基)の分化を明らかにした。我々の知る限り、ヌタウナギの内耳の発生が明らかにされたのは今回が初めてである。ヤツメウナギでは、半規管の発生は2つの陥凹から始まることが分かった。これは、現生顎口類における内耳の初期発生パターンに似ている。円口類のこうした耳胞には、OTX遺伝子を含む調節遺伝子に関して、顎口類に近い発現パターンが見られた。ヤツメウナギの耳胞には2つの陥凹が出現するが、それらは後に融合して、ヌタウナギのような1つの半規管を形成する。顎口類では、これらの陥凹が完全に分離して前半規管と後半規管を生じる。従って、ヌタウナギの耳胞に見られる1つの陥凹は、二次的に派生した形質だと考えられる。さらに、顎口類のクラウングループに見られる外側半規管は、OTX遺伝子の新規な発現領域によってではなく、OTX遺伝子の下流の発生プログラムの進化によって二次的に獲得されたものである。

