天体物理学:クエーサーにおける、空間分解されたサブパーセク広輝線領域の回転
Nature 563, 7733 doi: 10.1038/s41586-018-0731-9
降着を受けている超大質量ブラックホール付近のガスの高速運動による原子輝線の広がりは、クエーサーの観測上の特徴である。広輝線の観測によって、ガスの輸送機構が降着円盤を通して内側へなのか、ウインドを通して外側へなのかを絞り込める可能性がある。広輝線が観測される領域(広輝線領域)のサイズは、降着円盤の連続スペクトルの変化する光度と、輝線との間の光の到達時間の遅延を測定することによって推測されてきた。これは、反響マッピングと呼ばれる手法である。いくつかのモデルでは輝線は連続的なアウトフローから生じるが、他のモデルでは軌道運動しているガス雲から生じる。そのような領域の直接撮像は、それらの視角度が小さい(10−4秒角未満)ため、これまで不可能であった。本論文では、クエーサー3C 273の幅の広いパッシェンα輝線の赤方偏移側の画像中心と青方偏移側の画像中心との間の、電波ジェットの方向に対して垂直な空間的なずれ(空間分解能は10−5秒角、つまり5億5000万パーセクの距離に対して約0.03パーセク)について報告する。この空間的なずれは、ガス速度の勾配に対応しており、そのため、ガスが中心部の超大質量ブラックホールを軌道運動していることを示唆している。データは、質量が太陽の3 × 108倍のブラックホールを軌道運動している、重力的に束縛された物質からなる厚い円盤の広輝線領域モデルによく当てはまる。円盤半径は、これまで反響マッピングを用いて100〜400光日であると示されていたが、我々はこれが150光日であると推測する。円盤の回転軸は、電波ジェットと傾斜および方向が一致している。今回の結果は、降着を受けている超大質量ブラックホールの質量を推測するために、またそれらの宇宙時間にわたる進化を研究するために広く用いられている手法を裏付けるものである。

