気候科学:氷期には北極からの伝搬で南極周辺の偏西風や南極の気候が急激に変動する
Nature 563, 7733 doi: 10.1038/s41586-018-0727-5
南半球中緯度域の偏西風は、南大洋の湧昇流、深海との間の炭素交換、アガラスリーケージ(インド洋の海水の大西洋への輸送)、場合によっては南極大陸の氷床の安定性を通して、全球の気候システムに重要な役割を担っている。南半球の偏西風の南北方向の移動についてはこれまで、十分な裏付けのあるダンスガード・オシュガー(DO)イベント(最終氷期における北大西洋の気候の急激な変化)に応答した熱帯収束帯の移動と並行して生じたという仮説が示されている。水蒸気の西南極大陸への経路の変化はこの説明と矛盾しないが、熱帯から強制された太平洋のテレコネクションのパターンに対応している可能性がある。DOサイクルに対する南半球の大気循環の全体的な応答と、南極大陸の気温に対するその影響は、まだよく分かっていない。本論文では、火山噴出物の層を指標として深さと年代を一致させた5つの氷床コアを用いて、DOサイクルに対する南極大陸の気温の応答は、次の2つのモードの重ね合わせとして理解できることを示す。すなわち、北半球の気候から約200年遅延する空間的に均一な海洋の「両極シーソー」モードと、北半球における急激な事象と同期する、空間的に不均一な大気モードである。大気モードの気温偏差は、太平洋–南米パターンではなく現在の南半球環状モードの変動に伴う偏差と類似している。さらに、重水素過剰の記録からは、全海盆にわたって南半球の偏西風が、北半球の気候と位相を一致させて東西方向に移動することが示唆された。今回の成果から、北半球の急激な気候変動に強制された南極大陸周辺の気温変動を理解するための単純な概念的枠組みが得られた。我々は、南半球の偏西風の急激な移動に関する観測的な証拠を提供する。これは、全球の海洋循環と大気中の二酸化炭素に関して過去に報告されている影響である。こうした連動した変化は、単に北大西洋のみではなく全球的にDOサイクルを捉える必要があることを浮き彫りにしている。

