複雑ネットワーク:物理的ネットワークの構造転移
Nature 563, 7733 doi: 10.1038/s41586-018-0726-6
脳のニューロン、三次元集積回路、地中の菌糸ネットワークなど、多くの物理的ネットワークでは、ノードやリンクは互いに交わったり重なり合ったりできない物理的物体である。これを考慮すると、「交差禁止」という条件を課してネットワーク形状を制約し、結果としてネットワークの形成、進化、機能の仕方に影響を及ぼすことができる。しかし、こうした制約は、現実のネットワークの特性評価に現在使用されている理論的枠組みには含まれていない。ネットワークのレイアウトを決めるツールの大半は、無次元のノードとリンクを仮定する力指向レイアウトアルゴリズムの変種であるため、高い密度で充填された物理的ネットワークの形状を明らかにすることができない。今回我々は、ノードとリンクの物理的サイズを説明するモデリングの枠組みを開発した。これによって、交差禁止条件がネットワークの形状にどのような影響を及ぼすかの検討が可能になった。リンクが細いと、力指向レイアウトに対してレイアウト全体の構造を変えることなく、局所的なリンクの再配列を通してリンクの交差が回避される相互作用の弱い領域が観察された。リンクの太さがしきい値を超えると、リンクの全長や曲率などの複数の幾何学量がリンクの太さとともに変化する相互作用の強い領域が出現した。我々は、これら2領域間の交差が交差禁止条件によって駆動されることを示す。これによって、解析的に転移点を導出でき、ノード数の多いネットワークが最終的に相互作用の強い領域に存在することが明らかになった。さらに、相互作用の弱い領域のネットワークが応力に対して固体のような応答を示すのに対し、相互作用の強い領域のネットワークがゲルのように振る舞うことが見いだされた。相互作用の弱い領域のネットワークは3D印刷に適しており、そのためネットワーク形状の可視化に使用でき、相互作用の強い領域は、高密度の哺乳類脳のサイズのスケーリングに関する知見をもたらす。

