Letter

がん:オートファジーは循環血中のアルギニンを介して腫瘍の増殖を継続させる

Nature 563, 7732 doi: 10.1038/s41586-018-0697-7

細胞内の成分は、オートファジーによって捕らえられてリソソームへと送り込まれ、そこで分解されて代謝を持続するために再利用されたり、飢餓の際の生存を可能にしたりする。オートファジーに不可欠な遺伝子Atg7を成体マウスで急性に全身で欠失させると、全身的な代謝異常が生じ、その結果として、飢餓に対する耐性の消失や、白色脂肪組織、肝臓のグリコーゲン、筋肉量の段階的減少が見られるようになる。がん細胞もまた、オートファジーから利益を得ていて、自然発症がんのモデルでオートファジーに不可欠な遺伝子を欠失させると、自然発生腫瘍の代謝、増殖が妨げられ、腫瘍の生存能や悪性度が低下する。マウスで、Atg7を急性に全身で欠失させたり、優性ネガティブなATG4bを急性に全身で発現させたりすると、KRAS駆動性のがんが、腫瘍特異的にオートファジーを欠失させた場合に比べて大きく退縮することから、宿主のオートファジーは腫瘍の増殖を促進していると考えられる。今回我々は、宿主特異的にAtg7を欠失させると、複数の同種移植腫瘍の増殖が阻害されるが、あらゆる腫瘍株が宿主のオートファジー状態に感受性というわけではないことを示す。宿主でオートファジーが起こらなくなると、それに伴って循環血中のアルギニンが減少する。そして、感受性の腫瘍細胞株は、酵素アルギニノコハク酸シンターゼ1の発現を欠くためにアルギニン要求性である。血清のプロテオーム解析により、Atg7欠失宿主の循環血中からアルギニン分解酵素のアルギナーゼ1(ARG1)が見つかり、in vivoでのアルギニン代謝追跡により血清アルギニンはオルニチンに分解されたことが分かった。ARG1は主に肝臓で発現されており、肝細胞から循環血中に放出されることがある。肝臓特異的にAtg7を欠失させると循環血中ARG1が生じ、血清のアルギニンレベルと腫瘍の増殖の両方が低下した。宿主のAtg5の欠失でも、同様に循環血中アルギニンが減少し、腫瘍の増殖が抑制されることから、この表現型はAtg7の欠失に特異的ではなく、オートファジー機能の欠失に特異的であることが示された。Atg7欠失宿主に食餌によってアルギニンを補充すると、循環血中アルギニンレベルと腫瘍の増殖がある程度回復した。従って、宿主のオートファジーに欠陥があると肝臓からのARG1放出が引き起こされ、腫瘍の増殖に不可欠な循環血中アルギニンの分解が起こる。この結果によって、がんの代謝的脆弱性が1つ見つかった。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度