材料科学:規則的な酸素複合体による高エントロピー合金の強度と延性の向上
Nature 563, 7732 doi: 10.1038/s41586-018-0685-y
地球上で最も豊富に存在する元素の1つである酸素は、金属材料中で好ましくない格子間侵入型不純物やセラミック相(酸化物粒子など)を形成する。酸素の添加で金属の強度が高くなる場合でも、金属の脆性は高くなる。今回我々は、酸素が、酸化物粒子と頻繁に生じるランダムな格子間酸素原子の中間の状態である規則的な酸素複合体の形態をとり得ることを示す。従来の侵入型固溶強化とは異なり、そうした規則的な格子間複合体は、組成が複雑な固溶体、いわゆる高エントロピー合金(HEA)の強度と延性の両方をかつてないほど向上させる。モデルTiZrHfNb HEAに2.0原子%の酸素を添加すると、引張強度が増大(48.5 ± 1.8%)し、延性が大幅に向上(95.2 ± 8.1%)して、長年にわたる強度と延性のトレードオフが崩された。この酸素複合体は、(O, Zr, Ti)豊富な原子複合体を特徴とするHEA内の規則的なナノスケール領域であり、その形成は、HEAの置換マトリックス元素の中に化学的短距離秩序が存在することによって促進される。炭素は、積層欠陥エネルギーを減少させ、格子摩擦応力を増加させることによって、面心立方晶HEAの強度と延性を同時に向上させると報告されている。これに対して、今回報告した規則的な格子間複合体は、転位せん断モードを平面すべりから波状すべりへと変化させ、変形中にフランク・リード源の形成(複数の転位の発生を説明する機構)を通して二重交差すべり、ひいては転位増殖を促進する。この規則的格子間複合体を介したひずみ硬化機構は、格子間元素がその脆化作用のために嫌われるTi含有合金、Zr含有合金、Hf含有合金や、積層欠陥エネルギーの調節やアサーマル変態の利用が特性の向上につながらない合金において、特に有用と考えられる。今回の結果は、金属材料における侵入型固溶体とそれに伴う規則化強化機構の役割に関する知見をもたらすものである。

