量子物理学:原子スケールの接合における温度差に起因する電子雑音
Nature 562, 7726 doi: 10.1038/s41586-018-0592-2
1世紀前に電子の熱雑音とショット雑音が発見されて以来、こうした形の基本雑音は科学技術の研究や応用に大きな影響を及ぼしてきた。こうした雑音を用いて、量子効果や熱力学量を調べることができるが、目標信号を不明瞭にするため、電子デバイスでは望ましくないとも見なされている。電子熱雑音は有限(非ゼロ)温度において平衡状態で生成されるが、電子ショット雑音は非平衡な電流雑音であり、入ってくる電子の部分的な透過と反射(分配)によって生成される。これまで、ショット雑音は、直接印加した電圧や、放射線によって活性化された電圧によって刺激されてきた。本論文では、ナノスケールの導体を横切る温度差によって生成される基本的な電子雑音を測定し、これを「デルタT雑音」と名付けたことを報告する。我々は、この雑音を原子接合や分子接合において実験的に実証し、ランダウアー形式を使って理論的に分析した。今回の知見は、デルタT雑音が、熱雑音や電圧によって活性化されるショット雑音とは明らかに異なることを示している。デルタT雑音は、熱雑音と同様に、純粋な熱起源を持つが、非平衡状態でのみ生成される。デルタT雑音と標準的なショット雑音は、同一の分配起源を持ち、異なる刺激によって活性化される。我々は、精巧な局所プローブを作製する必要なしに、デルタT雑音と熱雑音を組み合わせて使うことで、ナノスケールの導体を横切る温度差を検出できると推測する。従って、ナノスケールでの熱輸送の研究が非常に容易になる可能性がある。現代エレクトロニクスの状況では、温度差は電子部品全体にわたって意図せず生じることが多いため、こうした場合にデルタT雑音の寄与を考慮することが、効率の良いナノスケールの電子部品を量子極限で設計するのに不可欠になると思われる。

