ナノスケール材料:大面積高性能電子デバイス向けの溶液処理で作製できる2D半導体
Nature 562, 7726 doi: 10.1038/s41586-018-0574-4
二次元(2D)材料は、ファンデルワールス力で結合した原子レベルの薄さの結晶層からなり、エレクトロニクス、オプトエレクトロニクス、触媒反応など、さまざまな技術分野において可能性があるため、多くの関心を集めている。特に、溶液処理で作製できる2D半導体(MoS2など)のナノシートは、大面積薄膜エレクトロニクスの魅力的な構成要素となる。従来のゼロ次元ナノ構造体(量子ドット)や一次元ナノ構造体(ナノワイヤー)は、表面のダングリングボンドやそれに付随する捕獲状態が問題になることが多いのに対し、2Dナノシートには表面にダングリングボンドが存在しない。複数枚のナノシートを積み重ねて形成される薄膜は、原子レベルで清浄なファンデルワールス界面を持つため、優れた電荷輸送が見込まれる。しかし、溶液処理で高品質の2D半導体ナノシートを作製することは、まだ困難である。例えば、リチウムをインターカレートして剥離する手法を用いて作製したMoS2ナノシートや薄膜は、金属1T相の存在や電気的性能が劣ること(移動度が約0.3 cm2 V−1 s−1でオンオフ比が10未満)が問題となり、一方で、液相で剥離して作製した材料は本質的に広い膜厚分布を示すため、膜質は悪く、薄膜の電気的性能が不十分である(移動度が約0.4 cm2 V−1 s−1でオンオフ比が約100)。今回我々は、2D結晶に第四級アンモニウム分子(テトラヘプチルアンモニウムブロミドなど)を電気化学的にインターカレートした後、穏やかな超音波剥離処理を行う溶液処理で、純粋な相からなる均一性の高い半導体ナノシートを作製する一般的な手法を報告する。インターカレーション化学反応を精密に制御することによって、膜厚分布の狭い純粋相半導体2H-MoS2ナノシートが得られた。次にこのナノシートをさらに加工して、室温での移動度が約10 cm2 V−1 s−1でオンオフ比が106という性能の高性能薄膜トランジスターを作製した。この性能は、溶液処理で作製されたこれまでのMoS2薄膜トランジスターのそれを大きく上回る。大面積薄膜トランジスターアレイのスケーラブルな作製によって、機能性論理ゲートと計算回路(インバーター、NAND、NOR、AND、XORの各ゲート、論理半加算器など)の構築が可能になった。また我々は、今回の手法を他の2D材料(WSe2、Bi2Se3、NbSe2、In2Se3、Sb2Te3、黒リンなど)にも適用し、汎用的な2D材料を溶液処理で作製する上でのこの手法の有用性を実証した。

