構造生物学:膜結合型O-アシルトランスフェラーゼの結晶構造
Nature 562, 7726 doi: 10.1038/s41586-018-0568-2
膜結合型O-アシルトランスフェラーゼ(MBOAT)は、内在性膜貫通型酵素のスーパーファミリーで、全ての生物界で見いだされる。細菌では、MBOATは細胞表面を保護するポリマーを修飾している。脊椎動物では、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼやジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ1などの複数のMBOAT酵素が、脂質生合成やリン脂質リモデリングを担っている。 ポーキュパイン、ヘッジホッグアシルトランスフェラーゼ、グレリンアシルトランスフェラーゼなどのこの他のMBOATはそれぞれ、Wnt、ヘッジホッグ、グレリンのような分泌タンパク質に不可欠の脂質修飾を触媒している。MBOATタンパク質の多くは重要な薬剤標的だが、その分子構造や機能する際の機構についてはほとんど分かっていない。今回我々は、グラム陽性細菌の細胞壁に含まれるテイコ酸のD-アラニル化反応を行うMBOATであるDltBについて、酵素単独の状態とD-アラニル基を供与するタンパク質DltCと複合体を形成した状態の両方の結晶構造を示す。DltBは周辺を囲む11本の膜貫通ヘリックスからなるリングを含んでいる。このリングはよく保存された漏斗状の細胞外に開いた構造を保護していて、漏斗は脂質二重層の中央へと伸びている。触媒として働く保存されたヒスチジン残基は、この漏斗の底に位置していて、細いトンネルを介して細胞内のDltCにつながっている。触媒ヒスチジン残基もしくはDltBのDltC結合部位に変異が生じると、リポテイコ酸のD-アラニル化が起こらなくなり、グラム陽性細菌の枯草菌(Bacillus subtilis)は細胞壁ストレス感受性となるため、トンネルが関わる触媒反応が膜を越えて起こると考えられる。DltBと脊椎動物MBOATのアミノ酸配列の構造に基づく比較から、保存された構造的コアが明らかになり、異なる生物由来のMBOATが同様の触媒機構を持つことが示唆された。我々の構造は、MBOATにおける構造・機能相関の解明と治療用のMBOAT阻害剤開発のための鋳型を提供するものである。

