分子生物学:ミクロコッカスヌクレアーゼを使った単一細胞塩基配列解読によって明らかになったヌクレオソーム構成の原則
Nature 562, 7726 doi: 10.1038/s41586-018-0567-3
ヌクレオソームポジショニングは、クロマチンへの到達のしやすさに極めて重要であり、細胞の遺伝子発現プログラムに関連付けられている。ヌクレオソームをマッピングするこれまでの手法では、細胞集団から得られたプロファイルを統合するので、細胞での平均的なパターンが明らかになる。すなわち、ヌクレオソームは活性な遺伝子の転写開始部位とDNアーゼI高感受性部位を取り囲むように配置され、位相配列を形成している。しかし、均一な細胞集団であっても、細胞の遺伝子発現には活発なシグナル伝達に応じた不均一性が見られ、これはクロマチンへの到達可能性の不均一性と関係しているかもしれない。今回我々は、ゲノム規模でのヌクレオソームポジショニングとクロマチンの到達可能性を1個の細胞で同時に調べられる手法を開発し、ミクロコッカスヌクレアーゼを用いる単一細胞塩基配列解読(scMNase-seq)法と命名した。scMNase-seqをNIH3T3細胞、マウス初代ナイーブCD4 T細胞およびマウス胚性幹細胞に適用して調べたところ、ヌクレオソームの構成に見られる2つの原則が明らかになった。すなわち、(1)ヘテロクロマチン領域のヌクレオソームや発現していない遺伝子の転写開始部位周辺のヌクレオソームでは、さまざまな細胞にわたってポジショニングに大きなばらつきが見られるが、整列したヌクレオソームの間隔はほぼ均等であり、(2)活発に発現中の遺伝子の転写開始部位やDNアーゼI高感受性部位周辺のヌクレオソームは、さまざまな細胞間でポジショニングのばらつきがほとんど見られないが、整列したヌクレオソームの間隔は比較的不均一である。DNアーゼI高感受性部位でのヌクレオソームの間隔には二峰性分布が認められ、これらはそれぞれ到達しにくい状態、到達しやすい状態に対応し、細胞全体のヌクレオソームのポジショニングのばらつきやクロマチン到達可能性の違いに関連している。ヌクレオソームのポジショニングのばらつきは、単一細胞内の方が異なる細胞間より小さく、同じタイプの細胞間の方が異なるタイプの細胞間よりも小さい。ナイーブCD4 T細胞とマウス胚性幹細胞のかなりの部分で、それぞれの細胞の分化した細胞系列で検出されたde novoのエンハンサー部位でヌクレオソーム占有率の大幅な低下が見られ、分化していない細胞集団中に、特異的な細胞系列に分化するようにプライミングされた細胞が存在することが明らかになった。

