がん:広範囲にわたるイントロンポリアデニル化は白血病で腫瘍抑制遺伝子を不活性化する
Nature 561, 7721 doi: 10.1038/s41586-018-0465-8
DNAの変異は、がんの駆動要因であることが知られている。今回我々は、がんで上向き調節されているmRNAレベルの事象が、遺伝的変化のもたらす転帰を機能的に模倣し得るのかどうかを調べる目的で、正常なB細胞と59人の慢性リンパ性白血病(CLL)患者の悪性B細胞について、RNA塩基配列解読と3′末端塩基配列解読を用いて解析を行った。原発性CLL細胞では、短縮型のmRNAやタンパク質が広く増加しており、これらは遺伝的変化によってではなく、イントロンのポリアデニル化によって生じていることが分かった。イントロンのポリアデニル化が原因の短縮型mRNAは頻発していて(n = 330)、主に腫瘍抑制機能を持つ遺伝子に影響を与えていた。イントロンのポリアデニル化により生じた短縮型タンパク質は、本来の完全長型タンパク質(DICERやFOXN3など)が持つ腫瘍抑制機能を欠いていることが多く、発がん性に働くものも複数見つかった(CARD11、MGA、CHST11など)。CLLでは、異常なmRNAプロセシングによる腫瘍抑制遺伝子の不活性化が、そのような遺伝子の遺伝的事象を介した機能喪失よりもはるかに多くなっていた。さらに、白血病ではイントロンのポリアデニル化により、また固形腫瘍では短縮型のDNA変異により不活性化された新たな腫瘍抑制遺伝子候補が見つかった。これらの遺伝子の全般的な変異率は、よく知られた腫瘍抑制遺伝子の変異率に比べて低いため、がんでは研究が進んでいない。今回得られた知見は、DNAレベルでは表れてこないmRNAレベルの事象が、腫瘍抑制遺伝子の不活性化を介してがんの発症に広く関わっていることを明らかにしており、がん診断ではゲノム解析を超える検討が必要であることを示している。

