構造生物学:ピック病由来の繊維の構造から明らかになったタウタンパク質の新規な折りたたみ
Nature 561, 7721 doi: 10.1038/s41586-018-0454-y
タウタンパク質が秩序立った集合をして異常な繊維状封入体を形成することは、多くのヒト神経変性疾患の基盤となっている。タウの集合は、各疾患に特異的な神経ネットワークを介して拡大するらしく、短い繊維が最大の播種活性を持っている。タウ封入体の量は疾患の症状と強く相関している。正常な成人脳で発現しているタウのアイソフォームは6種類で、それぞれが微小管結合反復配列を4つ持つアイソフォーム(4Rタウ)と、2番目の反復配列を欠くアイソフォーム(3Rタウ)が3種類ずつ存在する。さまざまな疾患で、タウ繊維は3Rタウもしくは4Rタウのどちらか、またはその両方から構成されている。タウ繊維は細胞内の分布や神経解剖学的分布が異なっており、形態学的および生化学的な差異が見られることは、それらが疾患特異的な分子コンホメーションを取り得る可能性を示唆している。このような配座異性体は多様な神経病理学的表現型を生じさせる可能性があり、プリオン株の影響を連想させる。しかし、こうした現象の基盤となる構造は知られていない。我々は最近、クライオ(極低温)電子顕微鏡法を用いて、アルツハイマー病患者に由来するタウ繊維の構造を報告した。これには3Rタウと4Rタウの両方が含まれる。今回我々は、前頭側頭型認知症が特徴の神経変性疾患であるピック病の患者に由来するタウ繊維の構造を決定した。この繊維は、3RタウのLys254–Phe378残基からなり、アルツハイマー病で見られるタウとは折りたたみ方が異なっていて、集合したタウの配座異性体の存在が確証された。ピック病患者の繊維で観察されたタウの折りたたみ方から、ピック嗜銀球への3Rタウの選択的取り込みや、アルツハイマー病のタウ繊維と比べた場合のリン酸化の違いが説明できる。我々の知見は、さまざまな疾患に罹患したヒト脳で、タウに別々の折りたたみ方が適用される仕組みを明らかにしており、この結果は配座異性体分子の形成と伝播を解明するのに不可欠な一歩といえる。

