Letter
神経科学:哺乳類の網膜における桿体光受容器のde novo発生後の視力回復
Nature 560, 7719 doi: 10.1038/s41586-018-0425-3
ゼブラフィッシュでは、ミュラーグリア(MG)が網膜幹細胞の供給源の1つであり、これによって損傷を受けた網膜ニューロンの補充や視力の回復が可能になる。しかし哺乳類では、MGが自発的に細胞周期に再進入して、網膜ニューロンへと分化する幹細胞や前駆細胞の集団を生み出すことはない。それでも、こうした再生機構が哺乳類の網膜に存在する可能性はあり、それは網膜の損傷によってMGの増殖が誘発され、その後に限定的な神経新生が起こり得ることで分かる。従って、MG由来の再生を哺乳類の網膜で視力回復に利用できるのかどうかは、いまだに根本的な疑問である。βカテニンの遺伝子導入は、マウスの網膜で損傷がなくてもMGの増殖を誘発する。今回我々は、βカテニンの遺伝子導入後に、桿体細胞運命の指定と決定に必須の転写因子を続けて遺伝子導入することで、MGの細胞周期の再活性化を再プログラム化でき、桿体光受容器が作り出されることを報告する。MG由来の桿体細胞は、先天盲モデルであるGnat1rd17Gnat2cpfl3二重変異マウスで、網膜から一次視覚野への視覚経路全体で視覚反応を回復させた。以上より我々の結果は、哺乳類網膜でのMGに由来する桿体光受容器のde novo発生後に、視力が回復する証拠を提供するものである。

