Letter

環境科学:気候工学の農業への全球的影響を火山噴火から推測する

Nature 560, 7719 doi: 10.1038/s41586-018-0417-3

太陽放射管理は、全球気温の管理における選択肢の1つとして考えられるようになってきているが、太陽光を宇宙空間へ散乱させることによる気候変動緩和の経済的影響についてはほとんど明らかにされていない。太陽放射管理は、熱ストレスの緩和によって作物の収量を増加させる可能性があるものの、付随して生じる利用可能な太陽光の変化による影響は、これまで実験的に推定されたことはない。今回我々は、太陽放射管理に関する最近の提案のきっかけとなった火山噴火を自然実験として用い、エルチチョンおよびピナツボ山の噴火で発生した成層圏硫酸塩エアロゾルが、全球の太陽光の量と質をどのように変化させたか、また、こうした太陽光の変化が全球の作物収量にどのような影響を及ぼしたかに関して、我々の知る限り初めての推測結果を提示する。これらの火山噴火に起因する成層圏硫酸塩エアロゾルは、C4作物(トウモロコシ)およびC3作物(ダイズ、イネ、コムギ)の両方に対し、太陽光を介して負の影響を及ぼしていたことが明らかになった。我々の収量モデルを、成層圏硫酸塩エアロゾルに基づく太陽放射管理シナリオに適用したところ、太陽放射管理によって太陽光が散乱されることに起因する損害の、21世紀半ばの予測値は、冷却による利益とほぼ同じ規模になることが分かった。これは、これらの火山噴火を模倣すべく、噴火で放出された成層圏硫酸塩エアロゾルと類似のエアロゾルを用いて太陽放射管理が実施されたとしても、正味には、気候変動による全球の農業損害はほとんど緩和されないことを示唆している。今回の手法は、ヒトの健康や生態系機能などといった他の全球システムに対する太陽放射管理の影響の研究にも応用可能と考えられる。

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