有機化学:光触媒反応と酵素触媒反応を組み合わせた協同的不斉反応
Nature 560, 7718 doi: 10.1038/s41586-018-0413-7
生物は、共存可能な複数の選択的酵素に触媒される同時反応に依存して、複雑な天然物などの代謝産物を合成する。こうした生体系の利点と人工化学触媒の反応性を組み合わせるために、酵素触媒と人工触媒を併用した逐次的、並列的、協同的な化学酵素反応が考案されてきた。協同的化学酵素反応は、2つの反応をそれぞれの基質を用いて逐次的に行ったのでは得られない収率と選択性で生成物を生成する連携過程からなる。しかし、一般に化学触媒と酵素触媒は異なる媒質中で異なる温度において作用するとともに、互いに不活性化し合うことがあるため、そうした反応は開発が困難である。こうした制約のために、過去30年間に報告された協同的化学酵素過程の大半は、わずか2つのカテゴリー、すなわちラセミアルコールやラセミアミンの化学酵素的な動的速度論的分割と、補因子の同時再生を必要とする酵素反応に分類されるにすぎない。この範疇を超える有用な化学変換を可能にするには、化学酵素反応を開発する新しい方法が必要である。今回我々は、アルケンを異性化する光触媒と、炭素–炭素二重結合を還元するエンレダクターゼを組み合わせた、エナンチオリッチな有用生成物を生成する協同的化学酵素反応を報告する。この方法は、より反応性の高い純粋な異性体を還元した場合に匹敵する収率と鏡像体過剰率で、E/Zアルケン混合物の立体収束的還元やアルケンの非反応性立体異性体の還元を可能にする。この系を用いることで、生物活性化合物のエナンチオリッチな各種前駆体が得られた。より一般的には、今回の結果は、光触媒と酵素を組み合わせることによって補因子再生にとどまらない化学酵素過程が可能になり、立体選択的酵素反応を立体収束的酵素反応に変える一般的な戦略が得られることを示している。

