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がん:リンパ腫で発がん性シグナル伝達を制御する多タンパク質超複合体

Nature 560, 7718 doi: 10.1038/s41586-018-0290-0

B細胞受容体(BCR)シグナル伝達は、B細胞リンパ腫の治療標的であることが明らかになっているが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)でこの経路を阻害しても、効果が見られるのは一部の患者だけである。DLBCLには2つの主要なサブタイプがあることが遺伝子発現プロファイリングによって突き止められており、その1つは胚中心B細胞様サブタイプ、もう1つは活性化B細胞様(ABC)サブタイプとして知られ、ABCサブタイプは免疫化学療法後の転帰が不良である。自己抗原は、ABC DLBCLでBCR依存的にNF-κB活性化を駆動する。これはSYK、BTKおよびPKCβからなるキナーゼシグナル伝達カスケードを介してCARD11–BCL10–MALT1アダプター複合体の集合を促進することによっていて、この複合体はIκBキナーゼを動員し活性化する。ゲノム塩基配列解読によって、BCRサブユニットであるCD79AおよびCD79B、それにToll様受容体シグナル伝達アダプターMYD88(最もよく見られるアイソフォームはMYD88(L265P)である)を標的とする機能獲得型変異が見つかった。臨床試験では、BTK阻害剤イブルチニブはABCの症例の37%で奏功が見られた。非常に意外な奏功率(80%)が見られたのは、CD79BとMYD88(L265P)変異の両方を持つ腫瘍だったが、これらの変異が協働してBCRシグナル伝達への依存性を助長する仕組みは不明である。今回我々は、ゲノム規模のCRISPR–Cas9スクリーニングと機能的プロテオミクスを用いて、イブルチニブに対する例外的な臨床応答性の分子基盤を決定することを試みた。そして、イブルチニブ応答性細胞株および生検試料で新たな様式の発がん性BCRシグナル伝達が見つかり、これはMYD88、TLR9およびBCRによって形成される多タンパク質超複合体(以後My-T-BCR超複合体と呼ぶ)によって調整を受けることが分かった。このMy-T-BCR超複合体は、エンドリソソーム上にmTORと共局在しており、そこで生存促進性のNF-κBシグナル伝達およびmTORシグナル伝達を駆動する。BCRシグナル伝達およびmTORシグナル伝達の阻害剤は協働してMy-T-BCR超複合体の形成と機能を低下させたので、My-T-BCR+ DLBCL細胞に対するこれらの阻害剤の相乗的毒性の機序に関する手掛かりが得られた。My-T-BCR超複合体はイブルチニブが奏功する悪性腫瘍が有する特徴であって、イブルチニブが奏功する患者群と非奏功患者群を区別できた。我々のデータは、DLBCLの分子レベルで限定されたサブセットで有効となる発がん性シグナル伝達阻害剤の合理的設計のための枠組みとなる。

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