気候科学:アフリカ南東部におけるヒト科の進化に対する200万年間の水文気候学的な背景
Nature 560, 7716 doi: 10.1038/s41586-018-0309-6
過去200万年間のアフリカ東部の気候変動は、ヒトの初期の進化において仮定されている役割の理解という観点から興味を持たれてきたにもかかわらず、今のところ十分に絞り込まれていない。アフリカ北東部の希少な古気候記録からは、徐々に乾燥化する状況、あるいは安定した水文気候が示唆されている。対照的に、熱帯域のアフリカ南東部のマラウイ湖の記録からは、過去130万年にわたって徐々に湿潤な気候になる傾向が明らかになっている。こうした過去の水文学的な変化を制御した気候強制力も議論の的になっている。ある研究では、水文学的変化に対して局地的な日射強制力が支配的であると示唆されている。一方で別の研究では、インド洋における海面水温の変化が影響を及ぼしている可能性が推測されている。本論文では、アフリカ南東部(南緯20~25度)の水文気候が、低緯度域の日射強制力(歳差と離心率)と高緯度域の氷体積の変化の相互作用によって制御されていることを示す。今回の結果は、過去214万年間のインド洋南西部の海面水温の再構築結果と組み合わせた、リンポポ川流域の水文学的変化の複数の代理指標による再構築結果に基づいている。我々は、マラウイ湖の記録から示唆される水文気候の変化とは対照的に、リンポポ川流域が約100万年前から60万年前まで長期にわたって乾燥化していたことを見いだした。マラウイ湖における湿潤化の証拠と併せて、今回の結果は、高緯度域における氷体積の増大に応答して、降雨帯が赤道域に向かって収縮したことを示唆している。陸域生態系における森林面積あるいは湿地面積が減少することで、観測されたアフリカ南東部の水文気候の変化は、その長期的な状態と著しい歳差変動の両方の観点から、初期ヒト族の進化、特にParanthropus robustusの絶滅に関与していた可能性がある。

