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気候変動:熱帯低気圧の移動速度の全球的な減少
Nature 558, 7708 doi: 10.1038/s41586-018-0158-3
地球大気が暖まるにつれて、大気循環が変化する。こうした変化は地域や季節によって異なるが、人為起源の温暖化は、一般に夏季の熱帯循環を弱めることを示す証拠がある。熱帯低気圧は周囲の環境の風系中を移動するため、熱帯低気圧の移動速度は温暖化に伴って遅くなってきた可能性が先験的に予測されている。循環の変化に加えて、人為起源の温暖化によって大気の水蒸気容量が増大するため、一般に降水量が増えると予想されている。また、熱帯低気圧の中心付近の降水強度も、全球の気温上昇に伴って高まると予想される。任意の地域における熱帯低気圧の活動に関連する降水量は、降水強度に比例し、移動速度に反比例する。本論文では、熱帯低気圧の移動速度は1949~2016年に全球で10%減少し、熱帯低気圧の降水強度の高まりの結果生じた可能性のある地域的な全降水量の増加をさらに悪化させた可能性が極めて高く、おそらくは支配していたことを示す。減速の規模は、地域や緯度によってかなり異なるが、人為起源の排出によって強制される大気循環の予想される変化とおおむね一致する。特に重要なのは、熱帯低気圧が襲来した北太平洋西部の陸域で30%、北大西洋の陸域で20%速度が減少し、オーストラリアの陸域では19%速度が減少していることである。2017年の米国テキサス州におけるハリケーン「ハービー」の「停滞」に伴う前例のない全降水量は、地域的な降水量と熱帯低気圧の移動速度の関係を示す顕著な例である。従って、過去や将来の熱帯低気圧の移動速度の系統的な変化は全て、特に陸域においては、地域的な全降水量の変化の可能性を検討する際に極めて重要である。

