材料科学:垂直配向させた液晶MXeneの膜厚に依存しないキャパシタンス
Nature 557, 7705 doi: 10.1038/s41586-018-0109-z
エネルギー密度と電力密度の高い厚い電極膜をスケーラブルかつ持続可能な方法で製造することは、輸送や定置型電力グリッドへの応用を目的とした大規模な電気化学エネルギー貯蔵に不可欠である。二次元ナノ材料は、表面積対体積比が大きく、固体拡散が起こりにくいため、高エネルギー密度と高電力密度を追求する中で電極材料の主要な選択肢となっている。しかし、従来の電極作製法では、二次元ナノ材料を再積層させることが多いので、厚膜中のイオン輸送が制限され、結果として電気化学的性能が膜厚に大きく依存する系となる。インターカレーションによる層間隔の拡大やナノ構造設計による膜への多孔性の導入などのイオン輸送を促進する戦略によって得られる材料は、体積エネルギー貯蔵量が少ないだけでなく、イオン輸送経路が複雑で長いため高充放電速度時の性能が低くなる。二次元薄片を垂直配向させることによって、方向性イオン輸送が可能になるため、厚膜でも厚さに依存しない電気化学的性能が得られる可能性がある。しかし、これまでのところ限られた成功例しか報告されておらず、工業基準である100 μmに近いかこれを超える膜厚の二次元ナノ材料膜を用いて動作させる際には、性能低下の軽減が大きな課題となっている。今回我々は、垂直配向させた二次元炭化チタン(Ti3C2Tx)について、膜厚に依存しない電気化学エネルギー貯蔵を実証している。Ti3C2Txは二次元材料であるMXene ファミリー[遷移金属(M)の炭化物あるいは窒化物;Xは炭素または窒素を表す]の1つである。垂直配向は、自己集合法で形成したTi3C2Txのディスコチックラメラ液晶相に機械的せん断力を加えることによって実現させた。こうして得られた垂直配向電極膜は、200 μmまで膜厚にほぼ無関係に優れた性能を示すので、エネルギー貯蔵用途に非常に魅力的である。さらに、今回提示した自己集合法はスケーラブルであり、触媒反応やろ過などの方向性輸送を伴う他の系に拡張して適用できる。

