進化学:後期ネアンデルタール人の遺伝史の再構築
Nature 555, 7698 doi: 10.1038/nature26151
これまでに、ネアンデルタール人DNAの現生人類への寄与が明らかになっているが、ネアンデルタール人の遺伝的多様性は明らかになっておらず、ネアンデルタール人が初期の現生人類と最後に交流した時期およびネアンデルタール人が最終的に姿を消す前における後期ネアンデルタール人の集団間の関係についても、あまり知られていない。ネアンデルタール人のDNAを多数の個体から回収する我々の能力は、標本内のDNAの保存状態の悪さ、および大量の微生物DNAや現代人DNAによるネアンデルタール人遺骨の汚染によって制限されてきた。今回我々は、骨または歯の粉末わずか9 mgを次亜塩素酸塩で処理することにより、約4万7000~3万9000年前のネアンデルタール人(すなわち後期ネアンデルタール人)の5個体について、1~2.7倍のカバー率でゲノム塩基配列を解読した。これにより、ゲノム塩基配列が判明したネアンデルタール人の数は2倍に増えたことになる。後期ネアンデルタール人の間に見られる遺伝的類似性は、それらの地理的な場所から的確に予測でき、コーカサスに由来するより古いネアンデルタール人1個体のゲノムとの比較からは、ネアンデルタール人の歴史の最終期に、コーカサスまたはヨーロッパ全域で集団の入れ替わりが起きていたことが示唆された。ネアンデルタール人から初期の現生人類への遺伝子流動の大部分は、今回研究対象となったネアンデルタール人から少なくとも7万年前に分岐した1つもしくは複数の集団に起因するが、以前塩基配列が解読されたシベリアに由来するネアンデルタール人からの約15万年前の分岐の後に生じたものであることが分かった。今回調べたネアンデルタール人の4個体は、初期の現生人類がヨーロッパに到達したと推定されている年代の後のものだが、これらの個体の祖先には初期の現生人類からの最近の遺伝子流動は全く検出されなかった。

