神経科学:ヒト海馬の神経発生は小児期に急激に減少して成人では検出できないレベルになる
Nature 555, 7696 doi: 10.1038/nature25975
成体哺乳類の海馬歯状回の下顆粒細胞層では、新しいニューロンが生産され続けているとされる。この過程は、学習や記憶、ストレス、そして運動と結び付けられており、神経疾患では変化していると考えられている。ヒトでも、いくつかの研究で、成人歯状回に毎日数百個の新生ニューロンが追加されると示唆されている一方、新生ニューロンと考えられるニューロンはそれよりもはるかに少ないとする研究もある。こうした不一致があるにもかかわらず、成人の海馬でニューロン新生は続いていると一般に考えられている。今回我々は、ヒトの胎児期や生後発達期の下顆粒細胞層には、はっきりしたニューロン前駆細胞集団が、他と紛れることなく存在することを示す。また、歯状回の増殖中の前駆細胞や幼若ニューロンの数は、生後1年の間に急速に減少し、7歳あるいは13歳では、隔離された幼若ニューロンはごく少数しか見られないことも分かった。成人のてんかん患者と健常者(18~77歳;17例の健常者死後脳標本と12例のてんかん患者の外科的切除標本)のいずれからも、歯状回の幼若ニューロンを検出できなかった。アカゲザル(Macaca mulatta)の海馬でも、下顆粒細胞層のニューロン増殖は、生後早い時期には見られたが、若年期発達中に神経発生が減少したのに伴って低下した。我々は、霊長類海馬への幼若ニューロンの補充は、生後数年のうちに急速に減少し、成人の歯状回でのニューロン新生は継続しないか、極めてまれであると結論する。ヒト海馬では神経発生が早期に減少することから、成熟後にも海馬ニューロン新生が持続する他の種とヒトとの間で、歯状回の機能にどのような違いがあるのかという疑問が提起される。

