Article
遺伝学:ヨーロッパ南東部のゲノム史
Nature 555, 7695 doi: 10.1038/nature25778
ヨーロッパに農耕が初めてもたらされたのは紀元前6500年頃で、この事象はアナトリアからの移住者と関連付けられている。アナトリア人は、ヨーロッパ南東部に定住した後にヨーロッパ全土へと広まった。今回我々は、この過程の動態を理解するため、紀元前1万2000~500年にヨーロッパ南東部およびその周辺地域で暮らしていた225個体に由来するゲノム規模の古代DNAデータについて解析を行った。その結果、先住の狩猟採集民における西から東への系統のクラインが明らかになり、ヨーロッパ東部には、青銅器時代のステップ系統形成の初期段階が認められた。ヨーロッパ北部および西部の最初の農耕民はヨーロッパ南東部を通って広がり、狩猟採集民との遺伝的混合は限定的だったのに対し、ヨーロッパ南東部の初期の農耕民の中には狩猟採集民との広範な混合が見られた集団もあったが、それは後にヨーロッパの北部と西部で広がった性差のある遺伝的混合ではなかった。また、ヨーロッパ南東部は農耕民の到達後も東部と西部とをつなぐ役割を持ち続け、ヨーロッパ北部の集団のほとんどを最終的に置き換えることになるステップからの複数回の移住事象の2000年近く前までは、ヨーロッパ南東部の集団とステップ系統集団との遺伝的接触は断続的であったことも明らかになった。

