神経科学:後部頭頂皮質は感覚の履歴を表現してその効果を行動に反映させる
Nature 554, 7692 doi: 10.1038/nature25510
多くの認知モデルや神経演算モデルでは、過去の刺激の統計の使用と見積もりを事実と仮定する。作業記憶や知覚は、たとえその感覚履歴が現在実行中の課題と関係なくても、過去の感覚経験に強く影響されることが以前から知られている。しかし、そうした先行経験の演算や使用に必要な神経機構や脳領域については、分かっていない。今回我々は、後部頭頂皮質(PPC)が、先行刺激情報の神経表現と使用に重要な部位であることを明らかにする。ラットに、聴覚を変数とした作業記憶課題を学習させると、ヒトやサルで見られるのと似た感覚刺激履歴の行動への大きな影響が見られ、それは容易に定量可能だった。PPCが作業記憶を支えているという説がこれまで出されており、その説によれば、この領域を光遺伝学的に抑制すると我々の作業記憶課題における行動は阻害されると予想される。しかし、その予想に反して、PPCを抑制すると、課題成績は有意に向上することが分かった。行動の定量的解析により、この成績向上の原因が、先行感覚刺激の影響の選択的減弱にあることが明らかになった。電気生理学記録では、PPCニューロンは、過去の試行時の感覚刺激に関する情報を、現在の試行の刺激についての情報よりもはるかに多く保持していた。さらに、どのラットでも、PPCの神経発火率で見た先行試行での感覚履歴情報が多ければ多いほど、感覚履歴の行動への影響は大きく、行動と刺激履歴のPPC表現との間の強い関係が示唆された。今回の結果から、PPCは感覚刺激履歴の処理の中心的な構成要素であることが示され、これによって過去の感覚情報がどのように知覚認識と作業記憶に影響するかに関する積年の疑問に対するさらなる神経生物学研究ができるようになるかもしれない。

