生態学:野外の魚類群集の変動する相互作用ネットワークと時間的に変化する安定性
Nature 554, 7692 doi: 10.1038/nature25504
生態学の理論は、群集安定性などの全体的なパターンが、経時的に変化する個々の種の行動応答や生理学的応答によって生じる種間相互作用の変化から影響を受ける場合があることを示唆している。この理論は実験によって支持されているが、自然生態系からは証拠が得られていない。それは、種間相互作用の急激な変化(世代時間よりもはるかに短い時間スケールで生じることが知られている)を追跡し、そうした変化が群集動態全体に与える影響を特定することが困難なためである。今回我々は、非線形時系列を解析するツールと、日本の舞鶴湾で野外の海水魚群集において隔週で収集された12年間にわたる目視観察データセットを用いて、相互作用ネットワークの短期的な変化が群集動態全体に与える影響を明らかにする。主要な15種の間に14の種間相互作用が見いだされ、これによって変動する相互作用ネットワークが組み立てられた。我々は、相互作用の強さ、および符号までもが経時的に変化することを明らかにするとともに、非平衡で非線形な系におけるアトラクターの動態に関する局所リアプノフ安定性に基づいて、時間的に変化する安定性の指標も開発した。そして、この動的安定性の指標を用いて、時間的に変化する相互作用ネットワークと群集安定性との関係を調べた。その結果、現在の生態学理論の予想をおおむね支持するような、魚類群集の動的安定性の季節的パターンが明らかとなった。具体的には、夏季に見られる弱い相互作用の優占および種多様性の高まりが、動的安定性の向上および個体群変動の縮小と関係していた。我々は、種間相互作用、群集ネットワーク構造、および群集安定性が動的な特性であり、自然界の生態群集の維持機構を理解するには、変動する相互作用ネットワークを群集レベルの動的な特性と結び付けることが重要であると考える。

