Letter

植物生態学:中国の被子植物相の進化史

Nature 554, 7691 doi: 10.1038/nature25485

種の多様性の高さは、最近の「ゆりかご」内での急速な種分化の結果、あるいは長い時間をかけて「博物館」の中で種が徐々に蓄積・保存されてきた結果である可能性がある。中国には、世界の被子植物種の10%近くが存在し、古い起源を持つと想定される種が多数存在することから「博物館」であり、また、最近の地形変化や気候変化(青海チベット高原の形成やモンスーンの発達など)によって新たな生息地が生じ、顕著な放散が促進されたことによって多くの系統が発生したために「ゆりかご」でもあると長く考えられてきた。しかし、中国の被子植物相の主要な構成要素がいつどのようにして集合し、現在の植生を形作ったのかに着目した詳細な系統発生学的研究は、これまで行われていない。今回我々は、中国の被子植物属の92%に関する年代が明らかな系統発生データ、2万6978種からなるほぼ完全な種レベルの系統樹、および詳細な空間分布のデータを用いて、中国の植物相の時空間的な分岐パターンを調べた。その結果、中国の被子植物属の66%が、中新世の初期(2300万年前)まで出現していなかったことが分かった。中国東部の植物相には、より古い分岐(平均分岐年代は2539万~2204万年前)、系統発生学的な過大分散(遠縁種の空間的共存)、および系統発生学的に高い多様性を示す特徴が見られた。一方、中国西部の植物相には、より新しい分岐(平均分岐年代は1886万~1529万年前)、顕著な系統発生学的クラスタリング(近縁種の共存)、および系統発生学的に低い多様性が認められた。シミュレーションした枝の長さを用いた種レベルの系統発生学的多様性の分析からは、属レベルのパターンと類似の結果が得られた。今回の分析結果は、草本性の属に関しては、中国東部が植物相の博物館で中国西部が進化のゆりかごであるのに対し、木本性の属に関しては、中国東部が博物館とゆりかごの両方の役割を果たしていることを示している。以上の結果は、種が豊富で系統発生学的多様性が高い地域を明らかにするとともに、中国で保全活動を取り組む上での基盤を提供するものである。

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