構造生物学:ヒト上皮に存在するカルシウムチャネルTRPV6の開口
Nature 553, 7687 doi: 10.1038/nature25182
カルシウム選択性のTRPV6(transient receptor potential vanilloid subfamily member 6)チャネルは、上皮組織でのカルシウム取り込みに非常に重要な役割を担っている。TRPV6発現の変化は、がんなどの多様なヒト疾患に関わっている。TRPV6チャネルは構成的に活性化されており、開口している確率はチャネルが存在する膜の脂質構成に依存していて、ホスファチジルイノシトール 4,5-ビスリン酸が存在すると開口確率が大幅に高くなる。閉状態の結晶構造は、界面活性剤で可溶化されたラットTRPV6のものがこれまでに解かれている。これらの構造から、電気生理学的実験結果から確認されているように、TRPV6のCa2+選択性は、Ca2+が強く結合する選択性フィルター中のアスパラギン酸側鎖が形成する輪に起因することが示された。だが、TRPV6チャネルがイオンを透過させるためにその小孔を開いたり閉じたりする仕組みはまだ明らかになっていなかった。今回我々は、ヒトTRPV6の開状態と閉状態のクライオ(極低温)電子顕微鏡によって得られた構造を示す。チャネルの選択性フィルターは、この両方の状態で同じようなコンホメーションをとっており、これはイオン透過におけるその明らかな役割と一致している。絞りのようなこのチャネルの開口は、小孔内表面を覆う膜貫通ヘリックスS6のαへリックスからπへリックスへの転換を伴っていて、これは選択性フィルターのすぐ下のアラニンヒンジの箇所で起こる。この移動の結果、S6ヘリックスは曲がって回転し、開状態と閉状態とで異なる残基がイオンチャネル小孔側に露出するようになる。このゲート開閉機構は、TRPV6の構成的な活性化の仕組みを明らかにするもので、我々の知る限り、四量体イオンチャネル中では独特であり、生理学的性質や疾患におけるこのチャネルの多様な役割を理解するための構造に関する手掛かりが得られる。

