分子生物学:L1調節因子のゲノム規模のスクリーニングで明らかにされたユークロマチンに存在するL1の選択的サイレンシング
Nature 553, 7687 doi: 10.1038/nature25179
転位性遺伝因子はトランスポゾンとも呼ばれ、今では、宿主による制御がなければゲノム内で拡散できない寄生性DNAとしてだけでなく、ゲノムの進化や調節で主要な役割を担う因子としても認識されている。LINE-1(long interspersed element-1;別名L1)は、現在のところヒトで唯一の自律的に移動するトランスポゾンで、ゲノムの17%を占め、個体間や個体内の遺伝的多様性を生み出し、疾患の原因になる場合もある。しかし、L1活性が制御されている仕組みや、宿主の遺伝子調節におけるL1の機能については完全には理解されていない。今回我々は、2つの異なるヒト細胞株でCRISPR–Cas9スクリーニング戦略を用い、L1レトロ転位の制御に関与する遺伝子群についてゲノム規模で調査した。その結果、L1のレトロ転位を促進または制限する機能的に多様な複数の遺伝子が明らかになった。これらの遺伝子は、ヒト疾患に関連することが多く、内因性L1のヌクレオチド配列に依存可能な様式で転写レベルあるいは転写後レベルでL1の生活環を制御しており、L1調節の複雑性が明確に示された。さらに我々は、タンパク質MORC2によるL1の制限と、HUSH(human silencing hub)複合体サブユニットのMPP8およびTASORによるL1の制限について調べた。HUSHやMORC2は、転写が許容されるユークロマチン環境内に位置する進化的に若い完全長のL1に選択的に結合でき、転写サイレンシングのためにヒストンH3 Lys9トリメチル化(H3K9me3)の沈着を促進した。特に、これらのサイレンシング事象が、転写活性のある遺伝子のイントロン内で起こることが多く、HUSH、MORC2およびL1に依存する様式で宿主の遺伝子発現の低下を引き起こすことは重要である。以上より、これらの結果は、L1レトロ転位研究のための豊富な情報資源となり、L1の新しい制限経路を明らかにし、転位性遺伝因子のエピジェネティックなサイレンシングが宿主遺伝子発現プログラムを再配線する仕組みを説明している。

