構造生物学:カルシウム依存性塩素イオンチャネルTMEM16Aのクライオ電子顕微鏡構造
Nature 552, 7685 doi: 10.1038/nature25024
TMEM16Aにコードされているカルシウム依存性塩素イオンチャネル(CaCC)は、ニューロンでのシグナル伝達、平滑筋の収縮、気道や外分泌腺からの分泌、胃腸系の律動性運動を制御している。CaCCが陰イオン透過を仲介・制御してこれらの生理機能を実行していく仕組みを解明するには、哺乳類TMEM16Aの構造を知り、その小孔内表面を覆う残基を明らかにすることが不可欠である。TMEM16Aは二量体を形成していて、2つの小孔を持つ。CaCCについて以前に行われた構造解析は、真菌Nectria haematococca由来で脂質スクランブラーゼとして主に機能するホモログ(nhTMEM16)のホモロジーモデリングと、サブナノメートル分解能のクライオ(極低温)電子顕微鏡法によるものだった。今回我々は、ナノディスク中およびラウリルマルトースネオペンチルグリコール中に置かれたマウスTMEM16A膜貫通ドメインの、単粒子クライオ電子顕微鏡法によって決定されたde novoな原子構造を示す。これらの構造からイオンが透過する小孔が明らかになり、さまざまな機能状態が示された。ラウリルマルトースネオペンチルグリコール中の構造では、一部が狭くなっている小孔を含む各単量体中に存在する1個のCa2+イオンが解像された。1つのCa2+が小孔を占拠しているCaCCが開口するためには膜の脱分極が必要であるから、これはチャネルの閉状態に対応すると考えられる。ナノディスク中の構造では、単量体当たり2個のCa2+イオンが存在し、小孔は閉じたコンホメーションにある。これはおそらく、1 mMのCa2+中でCaCCの活性化状態が長く続いた後にチャネルの活性が徐々に失われて起こったチャネルの活動停止を反映していると思われる。構造解析結果に基づいて変異誘発実験や電気生理学的研究を行ったところ、小孔に沿って分布し、透過する陰イオンと相互作用して陰イオン選択性に影響を及ぼす10個の残基に加えて、小孔の狭窄部近傍に集まってチャネルのゲート開閉を調節する7個の残基が明らかになった。まとめると、これらの結果はCaCCの陰イオン伝導の基盤を明らかにしている。

