古氷河学:東南極氷床の始まりと長期的不安定性
Nature 552, 7684 doi: 10.1038/nature25026
南極の大陸規模の氷床は、過去5000万年にわたって発達してきた。しかし、氷床の近傍の地質学的記録が不足しているため、東南極氷床(EAIS)の過去の振る舞いに対する理解、従って進行中の環境変化に対する応答を評価する能力も制限されている。EAISは、海洋に終端があり、オーロラ氷底盆地内部において海面下で接地しており、氷をサブリナ海岸へ排出しているこの集水域が気候の擾乱に敏感である可能性を示している。今回我々は、オーロラ氷底盆地の海側の大陸棚から得られた海洋の地質学的データと地球物理学的データを用いて、始新世の初期から中期までには、海洋に終端がある氷河がサブリナ海岸に存在したことを示す。この知見は、大陸規模の氷床が約3400万年前に確立される前に、かなりの体積の氷がオーロラ氷底盆地に存在したことを示唆している。その後、漸新世と中新世において、サブリナ海岸大陸棚をまたいで、氷床が少なくとも11回前進と後退を繰り返した。こうした氷河作用の約半分に伴うトンネル谷は、継続的な人為的温暖化から予測される気候条件に似た条件下で、表面融解水の多い氷河系が極の近くに存在していたことを示している。後期中新世以降の寒冷化によって極域EAISが拡大し、オーロラ氷底盆地集水域における鮮新世の暖かさに対する氷河の応答が制限された。サブリナ海岸の大陸棚から得られた地質学的記録は、現在より暖かい気候条件下では、海洋温度に加えて、気温と表面由来の融解水が東南極の氷河の質量収支に影響を及ぼしていたことを示している。今回の結果は、継続的な人為的温暖化に対するEAISの動的応答と、将来の全球海水準の予測へのEAISの寄与が過小評価されている可能性を示唆している。

