遺伝:体細胞および生殖細胞系列におけるトランスポゾンの選択的スプライシングのpiRNAを介した調節
Nature 552, 7684 doi: 10.1038/nature25018
転位性遺伝因子はゲノムの進化を推進することがあるが、その活性が強くなると宿主に不利益となるので、活性は厳密に調節されなければならない。転位性遺伝因子の調節にはpiRNA(Piwi-interacting small RNA)経路が重要な役割を持つが、これは転写サイレンシングあるいはmRNAの転写後分解を誘導するからである。今回我々は、piRNAおよびpiRNA生合成に関わる構成成分が、in vivoで転位性遺伝因子であるP因子転写産物の前駆体mRNAのスプライシングを調節していて、これがショウジョウバエ(Drosophila)生殖細胞での非トランスポザーゼをコードする成熟mRNAアイソフォームの産生につながることを示す。予想外なことに、このpiRNA経路の構成成分はショウジョウバエの生殖系列の発生に影響を及ぼす現象であるP–M交雑発生異常の際には、P因子トランスポゾンの転写産物レベルを低下させるようには働かない。それどころか、スプライシング調節は、機構的にはpiRNAが仲介する抑制性クロマチン状態の変化とともに行われ、これはPiwi–piRNA複合体タンパク質のAsterix(別名Gtsf1)やPanoramix(Silencio)に加え、HP1a(Heterochromatin protein 1a;Su(var)205にコードされる)の機能にも依存している。さらに、この装置はpiRNA Flamencoクラスターと共に、Gypsyレトロトランスポゾン転写産物の蓄積を制御するだけでなく、培養中卵巣体細胞のGypsy mRNAのスプライシングも調節する。この過程は遺伝性の転位事象につながることがある感染性粒子の産生に必要である。我々の知見は、スプライシング調節が、トランスポゾンの移動からゲノムを保護するためにPiwi経路が果たす新規な役割で必須の機能であることを明らかにしており、発生過程での選択的スプライシングの調整におけるクロマチン構造の役割を研究するためのモデル系を提供するものである。

