分子生物学:α-KGDH複合体と共役したKAT2AはヒストンH3スクシニルトランスフェラーゼとして働く
Nature 552, 7684 doi: 10.1038/nature25003
ヒストン修飾には、高頻度で見られるリシンのスクシニル化などがあり、クロマチンが関わるさまざまな過程の調節に中心的な役割を果たしている。しかし、ヒストンスクシニル化の機構やスクシニル化が機能に及ぼす影響は解明されていない。今回我々は、α-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ(α-KGDH)複合体がヒト細胞系列の核内に局在し、遺伝子のプロモーター領域でリシンアセチルトランスフェラーゼ2A(KAT2A、別名GCN5)に結合することを示す。スクシニル補酵素A(スクシニルCoA)は、KAT2Aに結合することが分かった。スクシニルCoAと複合体を形成したKAT2Aの触媒ドメインの分解能2.3 Åでの結晶構造から、スクシニルCoAがKAT2Aの深い裂け目に結合し、スクシニル基は可動性のループ3の末端方向を向くようになる。ループ3は、スクシニルCoAが結合した場合とアセチルCoAが結合した場合で、異なるコンホメーションをとる。部位特異的変異導入により、このループ中のチロシン645が、アセチルCoAではなく、スクシニルCoA選択的に結合するのに重要な役割を果たしていることが示された。KAT2Aは、スクシニルトランスフェラーゼとして働いてヒストンH3のリシン79をスクシニル化し、スクシニル化は遺伝子の転写開始部位の周辺で最も高い頻度で起こる。α-KGDH複合体が核に入るのを妨げたり、KAT2A(Tyr645Ala)を発現させたりすると遺伝子発現が抑制され、腫瘍細胞の増殖と腫瘍の成長が阻害される。これらの知見は、ヒストン修飾の重要な機構を明らかにしており、核内のα-KGDH複合体とKAT2Aのスクシニルトランスフェラーゼ活性の連携によるスクシニルCoAの局所的な生成が、ヒストンスクシニル化、腫瘍細胞の増殖と腫瘍の発生を助けることを明らかにしている。

