Letter

構造生物学:ヒトMHC-I ペプチドローディング複合体の構造

Nature 551, 7681 doi: 10.1038/nature24627

ペプチドローディング複合体(PLC)は、小胞体で一時的に生じる複数のサブユニットからなる膜複合体で、階層的な免疫応答の成立に不可欠である。PLCは、小胞体内へのペプチドの移行と、主要組織適合遺伝子複合体クラスI(MHC-I)分子へのペプチドの結合や編集とを協調させる。PLCによる最終校正後に、安定したペプチド–MHC-I複合体が細胞表面に放出され、感染を受けた細胞や悪性細胞に対するT細胞応答が引き起こされる。多様なMHC-Iアロモルフのサンプリングには、単一の巨大分子集合体中の7種類のサブユニット、つまりTAP1(transporter associated with antigen processing)およびTAP2(まとめてTAPと総称される)、オキシドレダクターゼERp57、MHC-Iヘテロ二量体、シャペロンであるタパシンとカルレティキュリンの正確な協調が必要とされる。PLCの分子構成やその内部で起こる機械的事象については、複合体の組成が不均質で本来的に変化しやすい性質を持つために明らかになっていない。今回我々は、ウイルス由来の阻害剤を遺伝学的に操作してベイト(餌)として使って、バーキットリンパ腫細胞からヒトPLCを単離し、クライオ(極低温)電子顕微鏡によってその天然の構造を決定した。タパシン、カルレティキュリン、ERp57、MHC-Iからなる2個の小胞体常在編集モジュールが、TAPの周りに疑似対称となるように配置されている。各編集モジュール内および編集モジュールの間の多価シャペロンネットワークが、MHC-I分子に対して側面の2か所の結合部位で校正機能を果たしている。カルレティキュリンのレクチン類似ドメインがMHC-Iの多糖を感知し、Pドメインの方はMHC-Iのペプチド結合ポケットを越えてERp57に達している。このような配置によってMHC-Iがしっかり固定されるため、タパシンのペプチド編集が容易になる。TAPの移行通路は小胞体の大きな内腔に向いて開いていて、その位置はタパシンとMHC-Iが膜に入り込む部位によって限定される。側面にある2個の窓が、抗原ペプチドをMHC-Iへと導く。組み立ての際のさまざまな状態で捉えられたPLCの複数の構造から、MHC-Iの動員と放出の機構に関する知見が得られた。今回の研究は、MHC-I集合の際のABC輸送体と小胞体シャペロンネットワークの分子的共生を明らかにしていて、獲得免疫応答の開始についての手掛かりを与えている。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度