神経科学:放射状の運動対抗性から生じる超選択的な接近感知
Nature 551, 7679 doi: 10.1038/nature24626
神経系は、低次の感覚信号を結合させて、例えば衝突の急迫や捕食者の切迫で生じる視覚的な接近運動など、生存に極めて重要な高次の刺激特徴を感知する。接近に感受性を持つニューロンは、さまざまな動物種で見つかっている。接近刺激などの異なる大規模な視覚特徴は、局所手掛かりを共有していることが多いため、接近を感知するニューロンは、紛らわしい刺激を除外するという難問に直面している。今回我々は、ショウジョウバエ(Drosophila)で、LPLC2(lobula plate/lobula columnar, type II)という接近を超選択的に感知するニューロンを発見したことを報告し、その選択性が放射状の運動対抗性(motion opponency)によって生み出される仕組みを示す。ハエの視覚系では、T4とT5と呼ばれる小視野の運動方向選択的なニューロンが視小葉板で空間地図を形成しており、それぞれのニューロンは4つの基本方位の運動に応答する4つの網膜部位対応層のうちの1つに投射している。単一細胞の解剖学的解析により、LPLC2は十字型をした一次樹状突起を持ち、各枝は4層のうち1つに入って分枝し、その層の至適運動方向に沿って伸びていることが分かった。その形態から予測されるように、各LPLC2ニューロンは、当該ニューロンの受容野の中心から発して外側に向かう運動に強く応答することが、in vivoカルシウム画像化法で確かめられた。また、各樹状突起分枝は、内側に向かう運動に選択的で興奮に拮抗する局所的抑制入力も受けていた。この放射状の運動対抗性によって興奮と抑制のバランスが生じ、LPLC2が、関連する運動パターン、例えば視対象の縮小、視野全体の回転、輝度変化などには応答しないようになっている。LPLC2ニューロンは集団として視野空間を密に覆っており、giant fibre下行ニューロンに投射して、跳躍筋運動ニューロンを駆動して逃避飛行を引き起こす。これらの知見から、ハエが接近する脅威を識別し逃避するために使う選択的特徴感知の機構の説明が付く。

