Letter
応用物理学:ナノスケールのスピントロニクス振動子を用いる神経形態学的コンピューティング
Nature 547, 7664 doi: 10.1038/nature23011
脳内のニューロンは非線形振動子としてふるまい、律動的に活動して、相互作用により情報を処理する。このふるまいから着想を得て、高密度かつ低電力の神経形態学的コンピューティングを実現するには、膨大な数のナノスケール非線形振動子が必要になる。親指サイズのチップ内に108個の振動子を二次元アレイにして収めるには、各振動子の横方向寸法を1 μ m未満にしなければならないことが、単純な概算によって示されている。しかし、ナノスケールのデバイスはノイズが多くなりがちで、信頼性の高いデータ処理に必要な安定性を欠くことが多い。このため、複数の理論的提案や、メモリスター振動子や超伝導振動子などの候補がいくつか示されたにもかかわらず、ナノスケール振動子を用いた神経形態学的コンピューティングの概念実証はまだ行われていない。今回我々は、ナノスケールのスピントロニクス振動子(磁気トンネル接合)を用いて、最先端のニューラルネットワークと同等の正確さで数字音声認識を実現できることを実験的に示す。我々はまた、最高性能につながる磁化ダイナミクス領域も見いだした。スピントロニクス振動子同士の相互作用能、それらの優れた耐久性、エネルギー消費の少なさとともに、今回得られた研究結果は、振動子ネットワークに基づく高速並列オンチップ・コンピューテーションに向けて道を開くものである。

