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物理学:高濃度細菌懸濁液における弱い同期と大規模集団振動

Nature 542, 7640 doi: 10.1038/nature20817

集団振動挙動は、自然界の至る所で見られ、胚発生や器官発生から神経回路網の歩調とりまで多くの生物学的過程において極めて重要な役割を担っている。同期を生じさせる機構を解明することは、生体の自己組織化の理解に不可欠である。多細胞生体系における集団振動は、拡散性化学物質や電気化学的機構、細胞と物理的環境の生体力学的相互作用を介して生じる長距離結合に起因することが多い。こうした例では、何らかの細胞内振動自由度の位相が同期している。今回我々は、これに対して、長距離結合や個々の細胞の固有振動を必要としない弱い同期機構を発見したことを報告する。我々は、細菌の高濃度懸濁液において、個々の運動性細胞は不規則に動き、明確な周期性運動をせず、突然ランダムに方向を変えることが多いが、数百万という細胞規模では自己組織化して非常にロバストな集団振動運動を起こし得ることを見いだした。各細胞の軌跡は非常に不規則なので、マイクロメートルサイズの細胞の集団振動を見いだすには、数十または数百マイクロメートルにわたってそれぞれの速度を平均する必要がある。そうした大きなスケールでは、振動の位相はそろっているように見え、細胞の平均位置は規則的な楕円軌跡を描くことが多い。我々は、振動の位相がセンチメートルスケールの進行波に組織化することを見いだした。我々は、厳密に局所的な相互作用をするノイズの多い自己推進粒子のモデルを提示する。このモデルから、我々の観察結果が忠実に説明され、自己組織化された集団振動運動がキラル対称性と回転対称性の自発的な破れに起因することが示唆される。今回の研究結果は、アクティブマター系(エネルギーが局所的に消費されて非ランダム運動を発生させる系)には、これまで観察されなかったタイプの長距離秩序が存在することを明らかにしている。この集団運動の機構は、アクティブマターや群ロボットの自己組織化を制御する新しい戦略につながる可能性がある。

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