分子生物学:ArfAとRF2による非典型的な翻訳終結機構の構造基盤の解明
Nature 541, 7638 doi: 10.1038/nature20822
細胞がリボソームを使ってメッセンジャーRNA(mRNA)を翻訳する際に、伸長段階や終結段階で翻訳装置が停止してしまうことがある。細胞が通常調節目的で行うプログラムされた停止を除けば、mRNA上で立ち往生したリボソームは、翻訳を終結させて再利用することで、細胞の適切な翻訳能力を維持させる必要がある。リボソームの停止の多くは、終止コドンを持たない異常なmRNAが原因となって起こる。転写エラーや一次転写産物のプロセシングの失敗、mRNAの不要な切断は全て、終止コドンのないノンストップmRNAの形成につながる。ノンストップmRNAの3′末端で停止したリボソームは、A部位の解読中心にカノニカルなペプチド終結因子が入ることによる終止コドンの特異的認識が起こらないため、正常に翻訳を終結できない。細菌では、tmRNA(transfer-messenger RNA)–SmpBを介したトランス翻訳による救済系が働いて、停止したリボソームを正常な伸長サイクルと翻訳終結へと復帰させる。その他に、ArfA–RF2系とArfB(以前はYaeJと呼ばれていた)という2つの救済系が多くの細菌に存在するが、その作用機構は完全には解明されていない。今回我々は、低温電子顕微鏡を用いて、ArfA、ペプチド終結因子RF2、短いノンストップmRNA、対応するP部位tRNAが結合した大腸菌(Escherichia coli)の70Sリボソームの構造を明らかにする。その結果、ArfAのC末端ループは30Sサブユニット上のmRNA進入チャネルに入っており、またN末端は解読中心とRF2のスイッチループ間に挟まっていて、それが解読中心とRF2に著しいコンホメーション変化を引き起こしていることが分かった。RF2がこの独特なコンホメーションをとっているにもかかわらず、保存された触媒GGQモチーフはP部位tRNAのCCA末端に正しく隣接する位置に来ていた。これらのデータから、ノンストップリボソーム複合体のRF2による終結を促進するために、ArfAが採用している終止コドンに依存しない機構が明らかになった。

