生物物理学:界面の脂質が膜タンパク質オリゴマーの安定化に果たす役割
Nature 541, 7637 doi: 10.1038/nature20820
脂質の結合に反応して起こる膜タンパク質のオリゴマー化は、細胞のシグナル伝達経路の多くで重要な役割を担っているが、その特性を明らかにしたり、予測したりするのは難しい場合が多い。今回我々は、界面脂質の存在とタンパク質オリゴマーの安定性を同時に決定できる質量分析法を用いる実験基盤を開発し、脂質が膜とタンパク質の会合の重要な調節因子として働く仕組みを明らかにした。αヘリックスを持つ膜タンパク質オリゴマー125種類からなるデータセットを使ってオリゴマーの強度を評価し、オリゴマーの安定性が高い12種類の膜タンパク質のマススペクトルには界面脂質が存在しないことが明らかになった。真核生物に不可欠な輸送体の細菌ホモログであるLeuT(オリゴマーの安定性が最も低いものの1つ)については、二量体の界面に脂質が確かに存在することが分かった。また脂質除去や脂質結合部位の変異、あるいはカルジオリピン欠失大腸菌(Escherichia coli)での発現では、LeuTの二量体形成が起こらなくなった。分子動力学的シミュレーションにより、カルジオリピンが二座のリガンドとして働いて、サブユニット間を架橋することが明らかになった。さらに、ビブリオ属細菌Vibrio splendidusの糖輸送体でやはりオリゴマーの安定性が低いタンパク質SemiSWEETでは、単量体から機能を持つ二量体へとカルジオリピンが平衡状態を移動させることが示された。我々は、大腸菌由来でオリゴマー強度が最も低いNa+/H+対向輸送体NhaAの二量体形成には脂質が必須だが、その相同体でずっと安定性が高い高度好熱菌Thermus thermophilus NapAタンパク質の場合には脂質は必須ではないだろうと考えた。実際、NhaAの二量体形成には脂質の結合が必須だが、NapAは脂質がなくても安定な界面を形成できるように適応してきたことが分かった。まとめると今回の結果は、界面脂質の存在と界面の強度を関係付けることにより、Gタンパク質共役受容体を含めたさまざまなαヘリックス性膜タンパク質での一時的相互作用と安定な相互作用に脂質が果たす役割を理解するための根拠を明らかにしている。

