古生物学:Tullimonstrumの眼は脊椎動物との類似性を示す
Nature 532, 7600 doi: 10.1038/nature17647
Tullimonstrum gregariumは、石炭紀のメゾンクリーク化石鉱床(米国イリノイ州)で見つかった象徴的な軟体性の化石生物である。「タリーモンスター」と呼ばれるこの生物は化石標本が多数あり、解剖学的構造も明らかになっているが、過去50年の間に行われたさまざまな分析でも系統発生上の類縁関係が突き止められておらず、軟体動物、環形動物または脊索動物などさまざまに異なる門に分類されながらも、その正体は今なお謎に包まれたままである。Tullimonstrumについては、保存されているどの解剖学的構造からも、比較解析に不可欠な相同性の決定的証拠が得られていないため、その正体や系統発生上の類似性を高い信頼度で系統立てて定めることができずにいる。今回我々は、Tullimonstrumの眼に、脊椎動物の眼との相同性を示す超微細構造があることを明らかにする。走査電子顕微鏡を使った構造解析から、Tullimonstrumの眼には、球状メラノソームと円筒状メラノソームの異なる層からなる厚いシートを特徴とする網膜が保存されていることが分かった。飛行時間型二次イオン質量分析法および多変量統計解析法からは、これらの微小粒がメラノソームであることを示すさらなる証拠が得られた。眼にメラニンを有する動物は多いが、2種類の形態のメラノソームがあって、それらが層をなして網膜色素上皮を形成しているというのは、脊椎動物の共有派生形質である。今回の解析結果は、体色パターン形成、生態および体温調節の証拠だけでなく、化石メラノソームにも系統発生シグナルが含まれている可能性があることを示している。Tullimonstrumの化石で見つかった網膜色素上皮を形成する球状および円筒状のメラノソームは、この生物が脊椎動物であることを示しており、この新たな観点から体の各部分を考察すると、脊椎動物という分類群全体の中ではTullimonstrumが解剖学的に特異な生物であったことが示唆される。

