ウイルス感染:エボラサーベイランス用の携行可能なリアルタイムゲノム塩基配列解読装置
Nature 530, 7589 doi: 10.1038/nature16996
西アフリカにおけるエボラウイルス病の流行は記録上最大のもので、2万8599例の感染を引き起こし、死者は1万1299人を超える。ウイルス感染が大流行している際には、感染性病原体の特徴付けとその進化速度を知るために、ゲノム塩基配列解読を行うことが望ましい。ゲノム塩基配列解読を行えば、宿主適応の兆候を明らかにしたり、診断対象を見分けて監視したり、ワクチンや治療への反応を解析したりすることも可能である。エボラウイルス(EBOV)マコナ株でのゲノム置換速度は、部位当たり年当たり0.87 × 10−3~1.42 × 10−3程度の変異に当たると推定されている。これは1個のゲノム当たり16~27個の変異に等しく、流行が長期化する間に塩基配列が迅速に分岐して、亜系統がはっきり区別できるようになることを意味している。ゲノム塩基配列解読は、病原体の進化状況を高い精度で明らかにでき、流行のサーベイランスに使うために必要性が高まっている。塩基配列データは流行への対策方針の手引きとしても使える可能性があるが、それには介入を指示できるように結果が十分迅速に得られなくてはならない。EBOVの今回の流行では、ゲノムサーベイランスは散発的にしか行われなかったが、それは地方に塩基配列解読設備が無かったことと、解読が可能な遠方の施設までの試料輸送が実施困難だったためである。この問題に対処するため、今回我々は、新しいナノポアDNA塩基配列解読装置を使うゲノムサーベイランスシステムを考案した。2015年4月に、このシステムを通常の航空手荷物としてギニアへ運び、進行中だった流行のリアルタイムでのゲノムサーベイランスに使用した。2015年3~10月に収集された142のEBOV試料の塩基配列解読データとその解析結果を示す。解読にかかる時間はわずか15~60分で、エボラ陽性の試料を受け取ってから24時間以内に結果を出すことができた。このシステムならば、資源に制約のある状況下でリアルタイムのゲノムサーベイランスが可能で、流行を監視するために速やかに確立できることが明らかになった。

