構造生物学:DNA触媒の結晶構造
Nature 529, 7585 doi: 10.1038/nature16471
生物学での触媒作用はRNA(リボザイム)とタンパク質酵素に限られているが、合成生体分子触媒はDNA(デオキシリボザイム)あるいは合成遺伝子ポリマーでも作られる。ランダムな合成DNAライブラリーからのin vitro選択により、RNA骨格の切断にとどまらず、さまざまな化学反応で使えるDNA触媒が見つかっている。DNAが触媒する反応には、さまざまなトポロジーでのRNAとDNAの連結、DNAの加水分解開裂や光修復に加えて、ペプチドや低分子化合物が関わる反応も含まれる。DNA触媒の包括的な生化学研究は20年間にわたって行われてきたが、原子分解能での三次元モデルがないため、その機能の根本的な機構は解明されていない。研究の初期に、RNAを切断するデオキシリボザイムの結晶構造の解明が試みられたが、その結果得られたのは、触媒作用とは無関係な核酸折りたたみ構造だった。今回我々は、RNA連結反応を行うデオキシリボザイム9DB1の分解能2.8 Åでの結晶構造を報告する。この構造は触媒作用を行った後の連結反応を捉えていて、多数の三次相互作用によって安定化されたコンパクトな折りたたみ単位と、触媒中心の予想外の構成が明らかになった。構造に基づく変異導入により、連結反応の位置選択性の基盤について手掛かりが得られ、基質認識と反応速度を大きく操作できるようになった。さらに、この構造はデオキシリボースに特異的な性質がDNA触媒の骨格のコンホメーションにどのように影響し、DNA触媒の複雑な三次元構造を支えているのかをはっきり示している。DNAの触媒活性の基盤となる構造原理から、DNA触媒とRNA触媒の相違点と類似点が説明でき、これは、折りたたまれたRNAが前生物世界と現存する生物で占める特別な位置を理解するのに関わりがある。

