化学:単一金属サイトにおける一酸化炭素の4電子脱酸素還元カップリング
Nature 529, 7584 doi: 10.1038/nature16154
二酸化炭素は、現代生活の中心にありながら問題を含んでいる化石燃料の本源である。化石燃料の使用によって大気中の温室効果ガス濃度が増加し、化石燃料の入手可能性は地政学的制約を受ける。二酸化炭素を原料として用いて合成燃料を生産すれば、原理的には、こうした懸念が軽減される可能性がある。多くの均一触媒や不均一触媒で二酸化炭素が一酸化炭素に変換されるが、一酸化炭素をさらに脱酸素カップリングして有用な多炭素生成物を合成することは困難である。モリブデンニトロゲナーゼやバナジウムニトロゲナーゼは、別々の電子源とプロトン源を用いて、温和な条件下で一酸化炭素を炭化水素に変換できる。また、銅触媒上における一酸化炭素の電解触媒還元でも、電子とプロトンの組み合わせが用いられる。一方、工業的なフィッシャー・トロプシュ法では、高温高圧下での一酸化炭素カップリングの電子源兼求電子剤源として水素分子が用いられる。しかし、こうした酵素系や不均一系は、機構面の精査が困難である。一酸化炭素の脱酸素カップリングの素過程を調べるために分子触媒が広く研究されてきたが、必要な炭素–酸素結合切断を効率よく誘起して炭素–炭素結合を形成できる単一金属サイトはまだ報告されていない。今回我々は、一酸化炭素の強い炭素–酸素結合を活性化して開裂させ、炭素–炭素カップリングを起こさせ、生成したフラグメントを自然に解離する、テルフェニルジホスフィン配位子に支持されたモリブデン化合物について報告する。この複雑な4電子変換は、テルフェニルジホスフィン配位子によって可能になり、この配位子は、電子貯蔵庫として働き、一連の反応全体に関与するさまざまな中間体を安定化させるのに必要な配位柔軟性を示す。こうした設計要素は、一酸化炭素を化学燃料に変換する高効率触媒の開発に役立つ可能性があり、単一金属サイトで複雑な多電子変換を行う幅広い状況下で有用性が立証されると我々は予想する。

