Letter
生物多様性:草原における長期の窒素付加からの生物多様性の回復
Nature 528, 7582 doi: 10.1038/nature16444
窒素による大気汚染の進行が草原の生物多様性に負の影響を及ぼしていることは、現在では議論の余地がない。しかし英国では、近年のクリーン技術の導入によって窒素酸化物の放出量が減少し、それとともに窒素沈着も減少した。このような大気質の改善に応答して草原の生物多様性がどの程度「立ち直る」ことが期待できるのかは不確かであり、長期の慢性的な窒素の付加が生物多様性の低い別の状態につながる可能性も示唆されている。本論文では、英国ロザムステッド研究所で160年前から行われているパークグラス実験から得られた証拠を示し、大気汚染と肥料のいずれかからの窒素の付加の減少に対して生物多様性が正の応答をすることを明らかにする。1991~2012年の実験期間中、湿性と乾性の窒素沈着が共に減少したのに伴い、マメ科植物の比率や、種の豊富さ、多様性は高まった。1989年に無機窒素肥料の投入を停止した区画では、失われていた多様性の大部分が回復し、特に石灰をまいた場合に回復が顕著であった。パークグラスの区画では、極度に酸性化した区画を除けば、慢性的な窒素の付加が生物多様性の低い別の状態をもたらすことを示す証拠は得られなかった。ただし、植物群落の回復は、年2回の草刈りおよびバイオマスの除去によって促進されたようである。このことは、より広域の景観の植物群落で窒素投入量の減少に対して類似の応答が観察されていない理由の説明にもなる可能性がある。

